お酒は本当に体に悪い?アルコールとの上手な付き合い方

お酒

こんにちは。管理栄養士のtanukiです。

キンキンに冷えたビールと揚げたてジューシーな唐揚げ、強炭酸のレモンサワーと熱々ギョウザ、今日はどっちにしよう?

毎日たくさんのストレスに晒される現代社会において、仕事終わりのお酒は元気の源。

しかし、お酒が体にとって元気の源なのかと言われると、自信を持ってうなずけない…

「お酒は体によくない」「少量ならお酒は体によい」あふれる情報の中、いったいどれを信じるべきなのでしょうか?

罪悪感を抱えたままの週末とは、今日でもうお別れ。

お酒について正しく理解し、すっきりとした気持ちで月曜日を迎えましょう

少量のお酒は健康によいってホント?

お酒についての議論は、全国で長年にわたって行われてきました。

様々な研究の中で、少しだけ見えてきた事実があります。

それは、少量のアルコールは、どうやら健康によい効果があるということ。

少量のアルコールを習慣的に摂取している集団、飲酒習慣を全く持たない集団、一定量以上の摂取習慣のある集団の3群に分けて調査が行われました。

その結果、少量のアルコールを習慣的に摂取している集団において、心疾患の発症や死亡、さらには糖尿病の発症が少なかったのです。

さらに別の研究では、アルコールの摂取量が増えると、HDLコレステロール量が増加するであろうことが判明しました。

HDLコレステロールは、善玉コレステロールとも呼ばれ、体内の不要なコレステロールを回収する役割をもちます。

体にとって重要な存在であり、メタボリックシンドロームの診断基準にも用いられます。

お酒はやっぱり体に悪いってホント?

ここまで、アルコールが体に与えるよい影響についてお話してきましたが、反対によくない結果も見ていきましょう。

実は、アルコールには良くない事実も数多く報告されているのです。

飲酒習慣は、口腔がんをはじめとして、さまざまながんの発症リスクを上昇させることが、多くの研究で示されています。

また、長期にわたる飲酒習慣は、血圧の上昇を助長するという研究結果も。

さらに、量が増えると、よりリスクを高めるともいわれています。

結論:お酒は控えた方がよい?

お酒の健康へのよい影響、悪い影響のどちらもみてきましたが、結局のところどうなの?

世界中で行われた多くの研究結果を踏まえると、現時点での結論はこうです。

アルコールとしての摂取量が10g/日を超えると、健康被害のリスクとなる。

そして、 10g/日以下であったとしても、健康被害のリスクが下がるとはいえない。

少量のお酒には、健康へのよい影響も報告されていましたが、結論はシビアです。

つまり、「アルコールにして10g/日以上はアウト安全は保障しませんが、飲むとしても10g/日以下に抑えましょう」ということ。

しかし、これはあくまで現時点での見解であり、お酒と健康に関する研究は、これからもどんどん進んでいくでしょう。

そのため、よい面、悪い面を理解したうえで、可能な範囲で節酒をするのが望ましいのではないかと考えます。

ここからは、可能の範囲での節酒について検討していきましょう。

少量のお酒ってどのくらい?

ここまで、世界中の研究結果をもとにした結論についてお伝えしましたが、現在大きな問題となっている生活習慣病に関して、少し異なる見解をご紹介します。

アルコール摂取量と健康については、さまざまな角度から研究が行われており、血糖値、血圧などによっても結果が変わってきます。

統計的に判断し、日本人の食事摂取基準では、アルコールは必須の栄養素ではないため過剰摂取による健康障害への注意喚起を行うにとどめ、指標は設けないとしています。

ですが、各疾患の学会では1日のアルコール摂取量の目安が定められており、例えば日本糖尿病学会では、25g/日以下としています。

高血圧治療ガイドライン2019では、男性 20〜30 g/日以下、女性 10〜20g/日以下の摂取を推奨。

では、お酒に換算するとどのくらいになるのでしょうか。

今回は、アルコール約20gに相当するお酒をご紹介していきます。

  • ビール(アルコール5%) 500ml(中ビン1本)
  • 日本酒(アルコール15%) 180ml(1合)
  • ウイスキー(アルコール43%) 60ml(ダブル)
  • ワイン(アルコール12%) 200ml(約2杯)
  • 焼酎(アルコール25%) 110ml(0.6合)

先ほどお話したように、世界中で行われた研究の結果を踏まえて、健康被害が認められると結論付けられたアルコールの摂取量は10g/日以上。

「10g/日未満としても健康被害のリスクが下がるとはいえない」とされていますが、これを守るとするとビールは1日250mlまでとなります。

ちなみに、一般的な缶ビールは1缶350ml、グラス200ml、小ジョッキ300ml、中ジョッキで500mlです。

グラスビールを選ぶことで、アルコール10g/日未満を達成することができるということですね。

注意すべきはアルコールだけじゃない?

ここまで、アルコールの摂取量について検討してきましたが、お酒と健康について結論付けるには、もう一つ考えなければならないことがあります。

それは、「お酒のおとも」について。

みなさんは、お酒を飲む日にどんな食事を摂っていますか?

唐揚げにギョウザ、それとも焼き鶏…?

主食、主菜、副菜のそろった食事を思い浮かべた人はほとんどいないのではないでしょうか。

ここからは、お酒を飲む際に注意すべき食事のポイントについてお話します。

そもそも、アルコールには栄養は含まれていないのか?

残念ながらお酒には、体にとって必要な栄養素はほとんど含まれていません

ですが、アルコールは、1g当たり7kcalのエネルギーを産生します。

たんぱく質・炭水化物4kcal/g、脂質9kcal/gと比べても、アルコールのエネルギー量は大きいといえるでしょう。

食事摂取基準の目標エネルギー設定では、アルコールは炭水化物に含まれます。

ビール500mlは約200kcalで、ご飯約130gのエネルギー量に相当します。

これを聞いて、ご飯の量を減らしてお酒を飲もうと考えた方が多いのではないでしょうか。

確かにエネルギー量の計算としては正解ですね。

しかし、ご飯には、食物繊維など大切な栄養素がたくさん含まれています。

一方で、先ほどもお伝えした通り、お酒には栄養素ほとんど含まれません。

むしろ、アルコールを摂りすぎると、代謝するために多くの微量栄養素が必要になります。

つまり、ご飯をお酒に変えてしまうと、必要な栄養素が不足してしまう危険性があるのです。

そのため、お酒を飲むと決めた日も、ご飯を抜くのはやめましょう

また、アルコールにはリラックス効果などよい面がある一方で、食欲増進にも働きます。

冒頭にも記載したように、唐揚げやギョウザなど、脂っこくてカロリーの高いものが欲しくなってしまうのです…

さらには、お酒には濃い味のおつまみがよく合いますよね。

ビーフジャーキーやチーズ、スナック菓子など、最近ではお酒に合わせて多彩な商品が数多く発売されており、ついつい手が伸びてしまいます。

封を切るのをぐっとこらえて、まずは成分表示を見てみましょう。

最も注目すべきは、エネルギー量塩分量(食塩相当量)です。

夜間にエネルギーを多く摂ると、床に就くまでに消費しきれなかった分は、脂肪として体に溜め込むことに。

特に内臓脂肪の蓄積は、生活習慣病の大きな原因のひとつです。

そして、お酒のおともは、基本的に味が濃く作られており、気にせず飲み食いしていると、あっという間に塩分を摂りすぎてしまいます。

塩分の摂りすぎは、高血圧症をはじめとして生活習慣病を助長します。

そのため、できるだけエネルギー量と塩分量の少ないものを選ぶことが大切です。

また、脂質は消化に時間を要するため、特に夜間は摂りすぎないようにしましょう。

脂質はエネルギー産生量が多いため、体に脂肪を溜め込む大きな原因となります。

お酒は、糖質と脂質、そして塩分の過剰摂取を招きます。

気にせず飲み食いしていると、あっという間にお腹の周りに脂肪が付き、気づけば生活習慣病に片足を突っ込んでいた…なんてことになりかねません。

そうならないために、強い意志を持って「お酒のおとも」を選ぶ必要があるのです。

もしかすると、本当に怖いのはアルコール自体ではなく、飲酒に付随して起こる食事バランスの乱れと言っても過言ではないのかもしれませんね。

どのお酒を選ぶのがよい?

ここまで、アルコールと健康について、そしてお酒と食事バランスの乱れについてお話をしてきました。

どうにかして、罪悪感なくお酒を飲みたい

最後に、そんなあなたに、おすすめのお酒をご紹介します。

先ほど、お酒のおともを選ぶ際、エネルギー量に注意するようにお伝えしました。

ですが、お酒自体のエネルギーが高くなってしまっては、元も子もありませんよね。

そのため、ここからは、エネルギー量を抑えるためのお酒選びについてお話します。

アルコールは、1gあたり7kcalのエネルギーを産生します。

そのため、カロリーを抑えるには、アルコール度数が低いものを選ぶのがおすすめです。

例えば、日本酒やワインは、一般的なものでアルコール度数10~15%ほど。

ワインを1ビン空けてしまった~という笑い話を耳にしますが、1ビン750ml飲み干すと、約550kcalとなります。

ご飯でいうと、約320gに相当します。

一般的なご飯1膳の量は150gですので、相当なエネルギー量であることをおわかりいただけるでしょう。

そこでおすすめなのが、焼酎やウイスキーのソーダ割

一般的な焼酎のストレートでは、アルコール度数は25~35%となります。

焼酎のソーダ割にレモンを加えれば、いわゆるレモンサワー、梅を漬けた焼酎を用いれば梅酒ソーダの出来上がりです。

例えば、焼酎30mlに炭酸水120ml、レモンを加えて作ったレモンサワーは、なんと150mlで約50kcal

これなら、ご飯とおかずに合わせて飲んでも罪悪感が少ないですね!

さらに、50kcalは、約15分間のウォーキングによって消費されるエネルギー量に相当します。

15分間のウォーキングを取り入れることができれば、罪悪感ゼロでお酒を楽しめちゃいますね!

ただし、砂糖やはちみつを加えたり、糖入りの炭酸水を使用するとエネルギー量が上がるため注意です。

そして、もうひとつのおすすめなのが、ウイスキーのソーダ割。

いわゆるハイボールですね。

ウイスキーは焼酎と比べてアルコール度数が高く、種類によって40%を超えるものも多く存在します。

ウイスキー30mlに対して炭酸水120mlで割ったハイボールでは、150mlあたり約70kcalと、こちらも比較的低カロリーですね。

計算上、25分間のウォーキングでカロリーは総裁できます。

ここまで、レモンサワーとハイボールについておすすめをしてきました。

では、同じくアルコール度数が5%のビールもOK?

残念ながら、答えはNO…。

ビールは、炭水化物を多く含むため、その分カロリーも高くなります。

ですが、アルコール度数が高い日本酒やワインと比べると、同量であればビールの方が低カロリーです。

例えば、種類にもよりますが、日本酒200mlあたり約220kcal、ワイン200ml(グラス2杯)で、約150kcal、ビール200mlは約80kcalとなります。

ワインは、糖質も少量含みますが、ほとんどがアルコール由来のエネルギーです。

一方で、日本酒は、アルコール度数が高く、さらにビールと同様に多くの炭水化物を含むため、高カロリーとなります。

ただし、ビールの問題点は、飲む量です。

特に、のど越しを楽しむのが好きな人は、ついつい量が増えてしまいがち。

ごくごくと飲んでいるうちに、あっという間に大量のエネルギーを摂ってしまいます。

種類にこだわらずお酒が好き!という方は、ぜひレモンサワーかハイボールを選びましょう

ただし、居酒屋では甘いシロップやはちみつなどが添加されていることもあるため注意が必要です。

お酒の種類によって好みが決まっている方は、飲む量に注意して、少量を楽しむとよいでしょう。

まとめ

アルコールと健康については、まだまだ議論の余地がありますが、アルコール量10g/日未満を目安に、できる限り節酒をするのが望ましいでしょう。

そして、アルコールはエネルギーを産生するため、度数の高いお酒には要注意

ビールや日本酒など、炭水化物を多く含むお酒も高カロリーとなりやすいです。

また、ビールはのど越しがよく、ごくごくと飲むうちにあっという間に量が多くなりすぎてしまいます。

種類にこだわらずお酒が好き!という方は、低カロリーなレモンサワーかハイボールを選ぶのがおすすめです。

レモンサワーは、150mlあたり約50kcal

約15分間のウォーキングによって消費されるエネルギー量に相当します。

ハイボールは、150mlあたり約70kcalと、こちらも比較的低カロリーです。

70kcalは、25分間のウォーキングで総裁できます。

ただし、居酒屋では甘いシロップやはちみつなどが添加されていることもあるため要注意。

お酒の種類によって好みが決まっている方は、飲みすぎず、少量を楽しむとよいでしょう。

そして、大きな問題となるのが、「お酒のおとも」です。

お酒には、唐揚げやギョウザなど、炭水化物と脂質、塩分の多い食品がよく合います

極めつけは、シメのラーメン。

これでは、1食のエネルギー量を軽くオーバーしてしまいます。

そのため、強い意志をもって、お酒のおともを選ぶ必要があるのです。

購入する際には、成分表示を確認し、エネルギー量と塩分量(食塩相当量)が少ないものを選ぶようにしましょう。

お酒とうまく付き合っていくために重要なのは、お酒の種類、そして、お酒のおともです。

正しく理解して、罪悪感なくお酒を楽しみましょう!

参考

厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)

https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf

エネルギー早わかり 第4版 女子栄養大学出版部

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